工房日誌 製作ダイアリー

ほとんどスケール 大日本帝国海軍 零式水上観測機 F1M2
九三式中間水上練習機」 「九五式水上偵察機」「九〇式水偵
とくればお後は・・・「零式水上観測機」2217クラス、1/12サイズのBIGスケールで
2009年 5月19日 三菱「零観」 新規製作開始 
すでに定石となったデッキ工法?、過去のアルバトロスのモノコックボディーの経験をもとに、
「丸鷹方式?」上下2分割鳥かご張りぼてモノコック工法をさらにリファインして。。
初めにカウルありき。 モールド新規製作してカウルを成形。それが大本で防火壁もサイズを確定。
2217の強力パワーに備え3mmベニヤでマウントをがっちり製作。広いスペースでリポ搭載も楽々。
カウルを上下分割して上側からリポ搭載を・・と考えたが、カウルの強度と組み立て方から断念。
やむなくバッテリー搭載はペラ、カウルを外して行うことに。
胴枠は1.5mmバルサ木目クロスして積層。組み立て前に中央基準線で上下切断。
中央接合部だけLアングルを使用、平板の上での組み立てはいつものとおり。
上面は水平・垂直尾翼差込みスロットを作りつけておく。
下側は翼取り付け部と前側を5mmバルサで。翼型にあわせおおよその形に切り取っておく。
台から剥がし、上側には操縦席床を1mmバルサで。これでがっちりゆがみなし。
上下Lアングル接着面をサンディングして貼り合わせれば、鳥かごのできあがり。
最前部にベニヤのマウント+防火壁を接着して胴体基本骨格の完成。
作図して、組み立ててみると、なんだか前に作ったような???
そう!エンジンから後ろをまっすぐに絞ったストレートテーパーの胴体って
まさに中島の一式戦「隼」とまるで同じなんです。
なぜか三菱なのに当時は互いに良いところを取りっこしてたんですかねぇ。
おかげで丸い鳥かごもきわめて簡単に作れるのがありがたい!
巾は狭いけど高さがある楕円だから、写真などでは意外とムックリして見えるけど実際はきわめて細くスマートな胴体なのです。
ここで下翼の中央部分だけ先に仕上げてしまう。下翼は中央部分だけフラットで両翼が上半角つきなのです
下翼の上面Rにあわせて胴体の5mmバルサを慎重にサンディングしてピッタリに削りだし。
それからフィレットの「底」になる1.5mmバルサをはさんで、前のダウェルと後ろの固定ビスを位置決めし、最終的な主翼取り付け位置を確定。
水平板差込みスリットに3mmバルサを差し込んで、主翼のアライメントをチェック。
まず胴体下半分をプランクをして、主翼部分を切り取り、フィレットの製作に。
九五水偵では下翼付け根のガル翼に苦労したけど、これは平らな翼なので比較的簡単にフィレットが作れる。

2009年 5月 24日 胴体組み立て完了
上半分もプランクして、操縦席、偵察員席、機銃格納スリット、尾翼差込みスリットを成形
この時期になると、尾翼にもフィレットがついてくる。
スリットに3mmバルサを差込み上下前後を5mmバルサでサンドイッチして、凹曲面をサンディングして成形。
防火壁前にカウルまでの胴体前部を5mmバルサ桶貼りで延長。上側はバッテリー搭載用に削り取る。。
カウルがピッタリ被さるように慎重に削りだし、サンディングして胴体完成。
水平尾翼は中央にコ型ピアノ線を通したパイプを埋め込み、左右別体の昇降舵を連結。
サンディングして平らな一枚板に仕上げ、スリットに差し込み式に。
上翼支柱の穴も丸棒ヤスリで慎重に位置決め。4mmカーボンパイプを芯にして支柱を作る。
前支柱は斜めに防火壁に突き刺さるから取り付け強度は完璧。
凝った尾翼周りでテールヘビーが懸念されたけど、この時点でモーター、バッテリー相当のバラスト(約150g)を乗せてみると、CGもちょうど下翼前縁前あたりでドンピシャに決まっている。

2009年 5月 26日 胴体ももう一ひねり・・・
これだけ大きいスケールなのにカウルをとらなければバッテリー交換できないのでは情けない。
一夜の夢枕でアイデア急浮上。下側は防水上、フロートステー取り付け上、開口できない。そこで・・・
防火壁からカウルまで延長した部分は3cm、ここがハッチになればリポの搭載も出来るではないか!?
やはり時間は無駄には過ぎていない。案ずるより生むが易し!胴体最前部の「ソデ」を切り取って修正。
うまいことハッチが出来た。これなら3S1300mAでも楽々出し入れも出来てしまう。
ぴったり閉まっているから開けるためにハッチの後ろにセロテープでつまみのリボンを貼っておけばいい!

2009年 5月 27日 主翼の製作
主翼は上下同じ平面形だけどまったく別物。
下翼は中央部分水平で両翼が上半角つき。上翼は中央接合で上半角各3度。
今回一番の「苦肉の策」はエルロン。
実機は三菱の苦心の賜物で、翼間支柱の中にエルロンのコントロールロッドを内蔵している翼端上下連動。
こればかりはどう悩んでもこのサイズではまったく不可能。かといって旧式機のように外側に連結ロッドをつけたりしたのでは先人の苦心に申し訳ない。 あくまでスマートな外観を保つために、やむなく上翼のみの翼端エルロンに。左右2サーボ翼内埋め込みにして、長さサイズを大きめに設定。
上下同サイズでしかもテーパー翼だから、これだけでも充分な旋回性能を持つはず。(模型機としては・・・)
下翼中央部分はすでに製作済み。左右翼端部分はエルロンなしなのでシンプルなテーパー翼でOK。
接着面のリブに3度の傾きをつけ、エポキシで接着。3mmカーボンパイプで接合してカンザシに。
上翼は単葉機と同じ、中央接合の上半角片側3度は実機どおり。エルロンは巾を拡大して面積増大。
2009年 5月 28日 機体ほとんど組み立てあがり
ストレート・テーパーで細く絞った薄い翼、
極力張り線を廃したシンプルな単支柱、
これまた細く絞ったスマートな胴体、
滑らかなRのフル・カウリング、
主、尾翼にもついているフィレット・・・

どこを見てもただ複葉というだけで、すでに
1935年以後の単葉機の設計を網羅している。
下駄履きの低速機にもかかわらず、秀作九六艦戦同等の究極の旋回空戦能力は、三菱技術陣の努力の結晶なのだ。

2009年 5月 29日 とどめは単支柱の単フロート
九五、九〇と立て続けに作ってきた水偵のフロート。でも今回はチョト違う。柱と張り線から金属の単支柱へと進化した、究極とも言える姿。滑らかな曲線をどこまで再現できるか?!
まずはメイン支柱の製作から。
前メイン支柱は5mmアルミパイプ(だけでは心もとないからさらに3mmカーボンパイプを内装)を、
防火壁に組み付けた胴体固定部(3mmベニヤの箱)に差込み、ビス止めで簡単着脱、なおかつ確実固定。
竹棒のノックピンでセンター位置決めも完璧。周りを5mmソフトバルサでサンドイッチして成形。
零観独特の支柱埋め込みオイルクーラーの穴も再現。
リヤステーは4mmカーボンパイプ+バルサ成形+被子チューブのシュリンクで、接合は1.5mmピアノ線を埋め込んで ▽形に。付け根は下翼後部の補強部分へビス止めに。
メインフロートは積層ではなく、1吋厚発泡スチロールの箱舟が基本。支柱埋め込み部分のガイドをバルサで造り埋め込み式に。接着は3Mのスプレー式ゴム系糊でサクサク、じゃなくてペタペタ。両面に薄く吹きつけ乾いてから貼り合わせるタイプで接着は強力。ただしミスしたらパー!剥がしはきかないから一発合の真剣勝負。
箱ができたら底面、上面のRをカッターで切り取り、サンディングして成形。
発泡カットの極意は絶えず新品のよく切れる刃を使うこと。サンディングは一方通行で。
コアの形が出来たら、上下中央にバルサストリップを埋め込み3Mで接着。プランク中央の瞬間接着ラインとする。この時点で前後支柱のアライメントを確認。
底面、R側面、後部△各パートをおおよその寸法で切り出し、上側はスチームアイロン蒸しで曲げワッパ。
@底面、A後部△平面、最後に両サイドと貼っていく。接合面は瞬間のスポットで固定。
この時代になると実機の底は凹Rの曲面。しかし金属板ではないから複合曲線の鼻先はバルサ曲げ加工では如何にせん不可能。そこでV角度を少し多めにして左右両端に幅広のチャインを接着、凹曲面にサンディングして
最大限実機に近づける。ステップから後半はシンプルにV底のままで。
やっと分かってきたフロート底面のサイドライン。円筒状の側板、V型の底、船型に絞った平面形、の合致する線は、なにも3次元曲線など考えなくても、そのまんま実機と同じラインになるのです。
一番厄介なのが涙滴型翼単フロート。3mmカーボンパイプステーを発泡でサンドイッチ、成形してからプランク。
曲線の接着、サンディングを見越して、1.5mmソフトバルサを型紙にあわせて切り抜き。
まず下面を貼り平面形を決める。上側はおおよその寸法で切り出し、スチームアイロン蒸しで曲げワッパ。
中央部分だけ押さえて接着し、先端、尾端のRは一ヶ所づつ位置あわせして順々に接着。隙間は楔形ストリップで埋める。切った貼ったの現物あわせ。最終的に瞬間でカッチリ固まった殻を、パテで修正、ガシガシ サンディングして完全な曲面に。
ステーも実機の金属製のように、3mmカーボンパイプ+バルサ成形+被子チューブのシュリンクで。
支柱は主翼への差込みはまっすぐだけど、台形に見えるように。。。斜め支柱はお決まりの輪ゴムダミー。

2009年 5月 30日 いよいよ完成 と思いきや。。。まだまだ宿題は山ほど、次から次と
やはり特注とあれば避けて通れないのがダミーエンジン。

複列14気筒の瑞星をそのまま作るわけではないから、
正面から見える前列7気筒と後列のプッシュロッドで
三菱製星型エンジンのムードを。
バルサ積層の一枚板でも、羽子板なみに
見た目にはそれっぽく・・・
延長したマウントベース側板にビス止めで。

カウルにも集合排気管をつけました。
各社各様とはいえ、ライトサイクロン、P&Wワスプの習作的な中島エンジンに比べ、三菱のエンジンは昭和初頭にライセンス生産したアームストロング・モングース130HP軽飛行機用星型5気筒が最初だったと思う。以来ユンカースとの提携などもあって、どことなくヨーロッパ的ドイツ風のにおいが強い。火星、金星、瑞星、どれも皆前方からのV型プッシュロッド。ロッカーカバーなどもどことなくBMWに似ているような・・・この「木星(製)」エンジンもそんなムードを狙ってみました。
も一つオマケが風防。この時代ではフルキャノピーも常識化していたが、観測機という性格上、当時の精度が悪くゆがんだり不透明になったりのアクリル板では無いほうがいい!というのがパイロットの士気?だったようで、前半分を覆う風防がついている。
・・・ということは古典機のように平板から切り抜いて折り曲げて出来上がりというわけにはいかない!
結局モールドを新調して(しかも前後全然別の形!!)PETキャノピーを。

2009年 5月 31日 いよいよ完成  フロート、リンケージ組み生地完成450g
フロート、リンケージ組み込み、生地完成で450g これは1/13で翼面積だけ1/12サイズにした九三水練が485gだったから、思いのほか軽く仕上がったようだ。2217クラスとあって随所を強化してガッチリ作ったのだけど結果オーライ! \(^0^)/~~~
濃緑色と灰白色のツートーンカラーだから、いつものとおりクリヤフィルム内面塗装なので、カバーリング完成もさほど重くはならない。これで2217パワーなのだから、練習機とは一味違うかなりの空戦性能が期待できそう。 ベテラン搭乗員の手で雄飛する日が待ち遠しい。。。

はるか昔、遠い少年の日に、初めて買ったプラモデルが、マッチ箱サイズ1/71のこの「零観」だった。
子供のころ「ゼロセン」と同じように「ゼロカン」って呼んでた。丸いスマートな胴体、なのになぜか二枚羽根、そんな魅力に惹かれたものだ。
小指ほどのムクの胴体、風防は透明プラの(あぶくの入った)ムク、接着剤はガラスのアンプル入りだった。ハート形したヤスリでおそるおそる首を切り、楊枝でスポット溶接してたっけ。でもあちこち流れてモールドラインは見るも無残に。。。
思い出深い、しかも内容の濃い名機を作るとあって、ついついいつもより気が入ってしまった。
形になって初めて「やった〜」という実感がこみ上げてくる。今宵の酒は美味し!
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